近年、日本の出生率は年々低下しており、2022年にはついに1.30まで落ち込みました。これは、第二次世界大戦後、1899年以来の最低水準です。
この出生率低下は、主に以下の2つの要因によるものと考えられています。
1. 非婚化・晩婚化
近年、未婚率の上昇と晩婚化が進んでいます。1970年代後半から20歳代女性の未婚率は急激に上昇し、1980年代に入ってからは、30歳代以上の女性の未婚率も上昇しています。晩婚化により、第1子を産む年齢が上がると必然的に第2子以降を産む年齢も上がります。健康や体力を必要とする出産・子育てが年齢的に厳しいものになることから、第2子以降の子どもを断念せざるをえないと考えられます。
2. 結婚している女性の出生率低下
非婚化・晩婚化に加え、結婚している女性の出生率も低下しています。これは、夫婦のライフスタイルの変化や経済的な負担の増加などが原因と考えられます。
しかし、興味深いことに、結婚している女性が実際に生んでいる子供の人数はさほど低下していないというデータがあります。
厚生労働省の「人口動態統計」によると、1970年には、結婚している女性の平均出生児数は2.44人でしたが、2020年には1.33人まで減少しています。しかし、これはあくまでも平均値であり、実際には3人以上子供を産んでいる夫婦も少なくありません。
なぜ、結婚している女性の出生率は低下していないのか?
その理由は、いくつか考えられます。
- 晩婚化の影響 晩婚化の影響で、第1子を産む年齢が上がっているため、結果的に出生児数が減っているように見える。
- 不妊治療の進歩 近年、不妊治療の進歩により、妊娠・出産できる年齢が延びている。
- 価値観の変化 かつては、子供を産むことは当たり前という価値観が一般的でしたが、近年では、子供を産まない選択も尊重されるようになり、夫婦それぞれの価値観に基づいて子供を持つかどうかを判断するケースが増えている。
出生率低下への対策
出生率低下は、日本の将来にとって大きな課題です。政府は、以下のような対策を講じています。
- 子育て支援の充実 待機児童問題の解消、保育サービスの拡充、育児休暇の取得促進など
- 経済的な支援 児童手当の拡充、出産育児一時金
- 働き方の改革 テレワークやフレックスタイム制などの導入
これらの対策が効果を発揮すれば、将来的に出生率の回復が見込めるかもしれません。
エビデンスに基づいた未婚化対策が日本の人口の未来を救う
上記に加え、近年注目されているのが、未婚化対策です。
株式会社ニッセイ基礎研究所 によると、日本の出生率低下は、夫婦が持つ子どもの数の減少ではなく、結婚数の減少が主な原因であると指摘されています。
1970年と2020年を比べると、40歳代前半の男女の未婚率は、男性は10.4倍、女性は4.9倍に増加しています。
これは、かつては「結婚して当たり前」だった時代から、**「結婚しないのが当たり前」**の時代へと大きく変化したことを示しています。
そして、
社会全体でアンコンシャスバイアスを払拭し、若者の願う成婚に向けた応援をできるかどうかが、日本の未来の人口を左右する。
と述べています。
まとめ
日本の少子化問題は深刻です。しかし、出生数の減少は夫婦が持つ子どもの数の減少だけが原因ではありません。結婚数の減少が大きな要因となっています。
若者の結婚意志は依然として高いのですが、世代間の価値観格差や政治・経済ジェンダーギャップなどの問題が、結婚を難しくしています。
これらの問題を解決するために、社会全体でアンコンシャスバイアスを払拭し、若者の願う成婚に向けた応援をすることが重要です。
関連情報
- 厚生労働省「人口動態統計」
- 国立社会保障・人口問題研究所「出生動向基本調査」
- 世界経済フォーラム「ジェンダーギャップ指数」
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